アレルギーの症状が出やすい体質にしたのはBCG予防接種

前の記事で、100年前の「種痘」によって、私たち全員が「アレルギーを生みやすい体質」に変化してしまったと書きましたが、ここで言う「アレルギー」は必ずしも「アレルギー疾患」の事を指している訳ではありません。身体のエネルギーを低下させるもの全体をアレルギーと呼んでいます。一方で、一般的に言われている「アレルギー体質」を抑制する遺伝子も見つかっています。

アレルギー体質は転写因子「Mina」の遺伝子が原因と判明
https://www.riken.jp/pr/press/2009/20090724/

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研究チームは、アレルギー体質の系統とアレルギー体質ではない系統のマウスを比較し、Minaという転写因子の遺伝子に複数のSNPsが存在することを発見しました。その結果、アレルギーになりにくいマウスの系統では、T細胞に多くのMinaが存在し、アレルギーの発症に重要なインターロイキン-4(IL-4)というサイトカインの産生を抑制しているのに対し、アレルギー体質のマウスのT細胞にはMinaが少なく、IL-4の産生が抑制されないために、アレルギーを発症しやすいことが明らかになりました。

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そこで、「Mina遺伝子」のアレルギーを確認したところ、全員に強いアレルギーがあると同時に、様々なアレルゲンに結びついたアレルギーも数多くみつかりました。どうも私たちは全員、アレルギーの症状が出やすい体質にも変わっていたようです。そこで、私たちが、アレルギーの症状が出やすい体質にも変わってしまったきっかけを探してみることにしました。

まず、「Mina」に結びついたアレルゲンを探索している中では、「BCGワクチン」が引っかかりました。ただ、結核菌そのものには結びついていませんでしたので、恐らく結核菌が産出している毒素があやしいと考えました。そこで浮かび上がって来たのが「トレハロースジミコール酸(TDM)」でした。

結核菌由来ミコール酸脂質グリセロールモノミコール酸に対する自然免疫応答の解析( Dissertation_全文 )
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/199473/2/dseik00332.pdf

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ミコール酸は、結核菌Mycobacterium tuberculosis に固有の長鎖分岐脂肪酸であり、細胞壁多糖層に共有結合する形でペプチドグリカンとともに細胞壁骨格を構築する。一方、細胞壁最表層には、ミコール酸含有脂質および糖脂質が遊離型として存在し、宿主免疫系との接点において多様な生物活性を示す。なかでも、トレハロースジミコール酸(TDM)は培養結核菌において多量に発現するミコール酸含有糖脂質であり、強いアジュバント作用を有することから精力的に研究が進められてきた。

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アレルギーを探索してみると、「Mina」と「TDM」とが結びついた強いアレルギーがみつかりました。TDMには強いアジュバント作用があるとの事ですので、「Mina」が多くのアレルゲンと結びついたアレルギーを作ってもおかしくありません。

以上の結果から、私たちを、アレルギーの症状が出やすい体質に変えたきっかけは、「BCG予防接種」であったと推定できます。日本において、BCG予防接種が始まったのが1938年頃との事ですので、恐らくその頃を境に、私たちは、アレルギーの症状が出やすい体質に変わって来ていると思われます。

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